壺中夢の47人のおんなたち

輝ける
47人のおんなたち

岡山県小川洋子(1962~)岡山県岡山市出身 小説家

芥川賞受賞、泉鏡花文学賞受賞、谷崎潤一郎賞受賞、芸術選奨受賞、他

小川洋子は“最初の構想通りになった小説はつまらない失敗作だ”と言っています。
神から聞こえる天の声を音符に置き換えイメージを膨らませて作曲するというモーツァルト的発想です。大袈裟に主人公を際立たせるとか、ヤマ場の設定とか、ドラマチックな涙とかを避けている作家でラブシーンも1、2行で抑制を効かして流れてしまわないように表現しています。

小川洋子の最大の個性は本人も不気味な怖さに驚きたい一心で自らドキドキしながら頭の中で遊ぶ人のようです。
想像と妄想と現実を綾する創作の遊び人かもしれません。
私という一人称で統一されていて主人公の名前がありませんから読者も話の中の一人となって読み進む、読み終わると自分も流れに関わった事件だったと錯覚します。
イメージが残ってストーリーを忘れてしまう感じです。
そのイメージは全編にわたり透明で美しく静かです。気が付いたら毒されファンになっている感じかなと思います。

芥川賞の「妊娠カレンダー」では妊娠中の姉に語らせている箇所は
“今頃胎児はねえ、まぶたが上下に分かれて鼻の穴が貫通している時期よ。
男子なら腹腔内にあった性器が下降してくるの、私の中から出てきたら、それはもう
否応無しに私の子供になってしまうの、選ぶ自由なんてないのよ、顔半分が赤痣でも、指が全部くっついていても、脳味噌がなくても……”。 「博士の愛した数式」「薬指の標本」「犬のしっぽを撫でながら」「妊娠カレンダー」 「冷めない紅茶」等多数です。

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